企業を経営する上でミッションを策定するのは大切だと言われるけれど、なぜなのかいまいちよくわからず悩んでいる人はいませんか?
この記事では、ミッションの意味からスモールビジネスでの活かし方まで詳しく解説します。
ミッションとは?
ミッションとは企業が果たさなければならない使命を指し、2002年にオーストラリアの経営学者であるピーター・F・ドラッカーにより、著書の「ネクスト・ソサエティ」の中で提唱されました。
ピーター・F・ドラッカーはミッション以外にもビジョン・バリューという言葉を提唱しており、この3つは混同されやすいため違いを表にまとめてみました。
用語 | 言葉の意味 | ビジネスにおける定義 | 企業において使われる場所 |
ミッション | 使命 | ・企業が果たさなければならない使命・企業が事業をする目的や社会の中で実現したいことを示す | ・経営理念・企業理念 |
ビジョン | 展望 | ・企業としての展望や理想・企業がミッションを完了してどうなりたいかを示す | ・経営理念・企業理念 |
バリュー | 価値 | ・企業や組織で共有しなければならない価値観や方針・従業員はバリューを基準にして行動する | ・行動指針・行動規範 |
企業において従業員はバリューを基準にして行動し、日々のミッションを達成することでビジョンに近づくとイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。
スモールビジネスにおけるミッションの現状
2022年に中小企業白書において、株式会社東京商工リサーチが中小企業5,318社を対象に行ったアンケート調査の結果が公表されました。
このアンケート調査は経営理念・ビジョンとはコアバリュー、パーパス、ミッションの三つの要素で構成されるとするCollins・Porrasの提唱した説を基にして、経営理念・ビジョンと経営戦略、経営戦術の関係を調べたものです。
すると中小企業において経営理念・ビジョンを明文化しているのは87.1%という結果で、内容は次のようなものでした。
BtoB | 同程度 | BtoC | |
顧客満足・信頼獲得 | 79.9% | 84.5% | 88.4% |
社員の幸福 | 66.5% | 64.8% | 67.9% |
社会への貢献・社会的使命 | 61.2% | 60.6% | 62.8% |
これらのことからミッションはほとんどの中小企業において明文化されており、内容は顧客満足・信頼獲得をうたったものが多いのが現状だと言えるでしょう。
参考:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第3節 中小企業経営者の経営力を高める取組」
スモールビジネスにおいてミッションを掲げるメリット
スモールビジネスにおいてミッションを掲げるメリットは、次の9つです。
・経営判断の軸にできる
・会社の意思決定のスピードが上がる
・従業員が同じ方向を向いて仕事に取り組むため企業の成長が早くなる
・従業員がミッションの達成に向かって仕事を進めるためモチベーションの維持につながる
・ミッションに共感した従業員の従業員エンゲージメントが上がる
・他社との差別化につながる
・会社のミッションに共感できる人材を採用できる
・人事評価の基準にできる
・ミッションに共感した顧客を増やせる
スモールビジネスで大企業と同じ市場で戦うのは難しいと言えますが、ミッションを明確化することで他社と差別化し、長くつきあえる顧客を増やせるでしょう。
スモールビジネスにおけるミッションの作り方
スモールビジネスにおけるミッションの作り方を、優れたミッションの条件、ミッションを作るタイミング、事前準備、作る手順の4つの観点からご紹介します。
ミッションを作る前に知っておきたい優れたミッションの条件
ミッションの提唱者であるピーター・F・ドラッカーは、優れたミッションの条件とは次の3つであるとしています。
・ミッションに社会に受け入れられる必然性がある
・自社の強みを活かすことができる
・組織に浸透しやすいミッションである
ミッションは作った後に使うものなので、それも見据えた条件だと言えるでしょう。
ミッションを作るタイミング
スモールビジネスにおいて、ミッションは起業時に作るのが望ましいと言えます。
最初にミッションを決めておくことで企業の目指す方向性が明確になるため、さまざまな課題が出てきても改善しやすくなり運営がスムーズになるでしょう。
ミッションを作るための事前準備
スモールビジネスにおいてミッションを作る時は、事前準備として次のようなことを考えておきましょう。
・顧客にどのような価値を提供できるか
・顧客に提供できる商品やサービス
・商品やサービスの市場
・自社で使用するテクノロジー
・成長、財政面が健全であるかどうか
・自社の強み
・社会的責任や環境への配慮
・従業員への姿勢
上記のことがしっかりと言語化できれば、ミッションも成文化しやすくなります。
1つ1つの項目を深堀りすれば、自社の判断基準となる普遍的な価値観が定まってくるでしょう。
ミッションを作る手順
事前準備が終わり、スモールビジネスにおいて実際にミッションを策定する時にはどのような手順で行えばよいのでしょうか。
3段階にわけてご紹介します。
メンバーと作成期限を設定する
スモールビジネスにおいてどのようなメンバーでミッションを作成すればよいのかは、特に定義づけられていません。
スモールビジネスにおいては、創始者の想いを明文化するだけで優れたミッションを生み出せる場合もあるためです。
しかし企業の今後の方向性を定めるものであるため、できれば経営者1人で決めるのではなく、複数の幹部とともにミッション策定に取り組むのが望ましいでしょう。
また最初は1人で起業し自分でミッションを決めたとしても、企業規模が成長していく段階でその段階に合ったミッションを、その時所属している幹部と共に決めるというのもおすすめの方法です。
ただしミッション策定に関わる人数が多すぎても意見がまとめにくくなってしまうため、5名程度を目安にメンバーを絞って話し合いを行いましょう。
ミッションステートメントを作る
ミッションを策定するメンバーが決まったら、次はミッションステートメントを作ります。
ミッションステートメントとは企業の根本的な原則=使命や存在意義、従業員が共有している価値観などを明文化したものです。
ミッションステートメントには次のような内容を盛り込むとよいでしょう。
・創業者の想い
・顧客への姿勢
・従業員への想い
・商品やサービスがもたらすベネフィット
・企業の優位性
・企業の社会的責任や社会貢献
ミッションは抽象的なメッセージになりがちですが、ミッションステートメントはミッションをより具体的・実践的に表現しているため、従業員が業務の中で行動の指針として使いやすくなります。
社内外に浸透させる
ミッションが決定したら社内に次の順番で浸透させます。
①経営層
②マネジメント層
③スタッフ層
経営層からマネジメント層への浸透を行うためには、ミッションステートメントに基づいた人事評価を行い、マネジメント層の行動や判断基準がミッションステートメントに基づいているかを評価します。
マネジメント層がミッションを理解し、それを反映した行動を取るようになることで、スタッフ層にもミッションが浸透しやすくなるでしょう。
また社外にもミッションを周知すると、それに共感する人材の採用やイメージ向上などにも結び付くため積極的に行うことが大切です。
スモールビジネスにおけるミッションの使い方
スモールビジネスにおいて、ミッションは次のような使い方ができるでしょう。
・経営判断の軸に用いる
・従業員のモチベーションアップ、離職率の低下につなげられる
・人事評価の基準として用いる
・社風に合った人材採用ができる
・企業のイメージアップに用いる
社内、社外に自社が実現したいことをわかりやすく伝えられるため、ミッションを作ったら積極的に活用しましょう。
スモールビジネスやスタートアップ企業のミッションの事例
2012年7月に設立され、クラウド会計ソフト「freee」を提供しているfreee株式会社のミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」です。
このミッションはわかりやすいだけではなく、freee株式会社がターゲット顧客とするスモールビジネスを経営する人に広く共感してもらえる内容となっています。
freee株式会社はスモールビジネスを今までにない多様な価値観や生き方、新しいイノベーションを生み出す起爆剤と捉え、その成功を後押しすることで社会がもっとおもしろく、世の中全体が良くなると考えていますが、それをわずか一文で表現したのがこのミッションの素晴らしさだと言えるでしょう。
株式会社KAKERUではスモールビジネスにおけるミッション策定をサポートしています
株式会社KAKERUではスモールビジネスにおいては目的とゴール、現在地が明確にならないとその先の計画や実行が最短距離にならないと考えているため、起業時のミッション策定をとても重要なことだと捉えています。
そのため、株式会社KAKERUでは業種や社歴が多種多様なスモールビジネスの経営をそばでサポートしてきたメンバーがミッション策定をサポートしているのです。
ミッションを策定したいけれど、盛り込みたい内容がまとまらない、何から始めたらよいのかよくわからないなど、漠然とした相談からでも受け付けております。
自社のビジネスで実現させたいのは何かをはっきりさせたい方は、ぜひ次のページをクリックしてみてください。
”〇〇”がさらに楽しくなる仕掛けを創る – 株式会社KAKERU (kaxeru-office.com)
まとめ
ミッションとは企業が果たさなければならない使命を指し、社内、社外に自社が実現したいことをわかりやすく伝えることができるため、中小企業においても87.1%の企業が明文化しています。
この記事も参考にしてぜひ適切なミッションを策定し、自社のビジネスの可能性を広げていってください。