中小企業においては抽象的ではなく、より具体的なバリューを定めると経営に活かしやすいと聞くけれど、どうしてなのかよくわからないと困っている人はいませんか?
この記事では、バリューを経営で活かす方法から中小企業におけるバリューの例まで詳しく解説します。
バリューとは?
バリューとは企業や組織で共有される価値観や方針、判断基準を指し、2002年にオーストラリアの経営学者であるピーター・F・ドラッカーにより、著書の「ネクスト・ソサエティ」の中で提唱されました。
ピーター・F・ドラッカーはバリュー以外にもミッション・ビジョンという言葉を提唱しており、この3つは混同されやすいため違いを表にまとめてみました。
用語 | 言葉の意味 | ビジネスにおける定義 | 企業において使われる場所 |
ビジョン | 展望 | ・企業としての展望や理想・企業がミッションを完了してどうなりたいかを示す | ・経営理念・企業理念 |
ミッション | 使命 | ・企業が果たさなければならない使命・企業が事業をする目的や社会の中で実現したいことを示す | ・経営理念・企業理念 |
バリュー | 価値 | ・企業や組織で共有しなければならない価値観や方針・従業員はバリューを基準にして行動する | ・行動指針・行動規範 |
企業において従業員はバリューを行動基準とし、日々のミッションを達成することでビジョンに近づくと考えるとわかりやすいでしょう。
また企業や組織の核となる価値観をコア・バリューと呼び、コア・バリューを基準とした日々の行動や意思決定を徹底することで組織変革を促す経営手法をコア・バリュー経営と呼びます。
中小企業におけるコア・バリュー策定の現状
中小企業におけるコア・バリュー策定の現状とは、どのようなものなのでしょうか。
2022年に中小企業白書において、株式会社東京商工リサーチが中小企業5,318社を対象に行ったアンケート調査の結果が公表されました。
このアンケート調査は経営理念・ビジョンとはコア・バリュー、パーパス、ミッションの三つの要素で構成されるとするCollins・Porrasの提唱した説を基にして、経営理念・ビジョンと経営戦略、経営戦術の関係を調べたものです。
このアンケート調査の内容を基に、コア・バリューを含む経営理念・ビジョンに対する従業員の受け止め方や反応、浸透に向けて取り組んだ行動、浸透による効果の3つの観点から中小企業におけるコア・バリュー策定の現状をご紹介します。
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンに対する従業員の受け止め方や反応
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを策定している企業において、従業員の受け止め方や反応を調べた所、次のような結果が出ました。
従業員の受け止め方や反応 | 共感・共鳴しており行動に結び付いている | 共感・共鳴しているが行動に結び付いていない | 理解はしているが共感・共鳴はしていない | 認知はしているが理解はしていない | 認知していない |
割合 | 47.0% | 25.4% | 12.9% | 9.0% | 5.7% |
中小企業では半数程度の企業において、コア・バリューを含む経営理念・ビジョンに対し従業員が共感・共鳴し行動にも結び付いています。
しかし半数の企業ではせっかく策定したバリューが活かされているとはいえない状況のため、従業員が同じ価値観で行動するためにも今後バリューの浸透に向けた取り組みが求められるでしょう。
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンの浸透に向けて取り組んだ行動
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを策定している企業は、その浸透に向けてどのような行動をしたかを浸透状況別にたずねた所、次のような結果でした。
全社的に浸透している | 主任・係長クラスまで浸透している | 部長・課長クラスには浸透している | 経営層までは浸透している | 浸透していない | |
従業員との日々のコミュニケーションでの啓もう | 52.4% | 49.4% | 45.2% | 36.3% | 25.5% |
経営者による年頭挨拶や社内会議での訓示 | 51.6% | 52.1% | 51.8% | 40.4% | 26.2% |
自社ホームページでの掲載 | 35.6% | 31.0% | 29.4% | 29.5% | 18.2% |
社内研修などを通じた教育 | 35.5% | 33.7% | 29.0% | 22.3% | 15.0% |
経営理念・経営ビジョンに基づく規範・ルールの策定 | 32.4% | 30.6% | 30.5% | 24.0% | 13.3% |
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを浸透させている企業ほど、従業員とのコミュニケーションや社内研修など、個人に向けて丁寧に発信をしていることがわかります。
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンの浸透による効果
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを策定している企業に対し、その浸透によってどのような効果があったかを浸透状況別にたずねた所、次のような結果でした。
全社的に浸透している | 主任・係長クラスまで浸透している | 部長・課長クラスには浸透している | 経営層までは浸透している | |
従業員の自律的な働き方の実現、就業観などの共有 | 55.0% | 50.0% | 36.5% | 23.0% |
仕事や目標達成に対するモチベーションの向上 | 49.7% | 47.1% | 40.9% | 28.6% |
自社の意思決定のより所となった | 40.7% | 32.9% | 33.4% | 28.6% |
顧客や取引先との関係強化 | 34.0% | 32.2% | 28.8% | 25.7% |
従業員の自社への愛着度向上 | 34.9% | 27.3% | 21.3% | 12.3% |
バリューが組織に浸透することで従業員の行動基準としての役割を果たすだけではなく、モチベーションや自社への愛着度の向上などにも役立っていることがわかります。
参考:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第3節 中小企業経営者の経営力を高める取組」
中小企業においてバリューを策定するメリット
中小企業においてバリューを策定するメリットとはどのようなものでしょうか。
3つご紹介します。
人事評価においてバリュー評価ができる
バリュー評価とは人事評価手法の1つで、従業員がどれだけ定められたバリューを基準にして行動できたかを相対的に評価します。
バリュー評価を行うことで従業員が企業の価値観や行動基準を意識するようになるため、会社として一体感を持って進めるようになるでしょう。
自社に合った人材を採用できる
バリューを策定することで、自社で共有したい価値観や方針を言語化して伝えられるようになるため、自社に合った人材を採用しやすくなります。
会社がしてほしい行動の基準がバリューであることを就職希望者や転職希望者にアピールできれば、合わないと感じる人が自然に集まりにくくなるでしょう。
自社の価値観や方針に合わないビジネスに手を出さずに済む
バリューを定めることで、自社の価値観や方針に合うビジネスと合わないビジネスが明確化するため、合わないビジネスに手を出さずに済むようになります。
またパートナーとする企業も軸をぶらさずに選べるようになるため、相性の良い企業と仕事ができるようになるでしょう。
中小企業の経営におけるバリューの使い方
中小企業においてバリューを策定したら、経営においてどのような使い方をするのが望ましいのでしょうか。
3つご紹介します。
経営判断に用いる
中小企業白書で行われたアンケート調査で、コロナ禍において策定の動機・きっかけ別にコア・バリューを含む経営理念・ビジョンに立ち返り経営判断を下した機会についてたずねた所、次のような結果でした。
策定の動機・きっかけ | 週に1度以上はあった | 月に1度はあった | 2~3ヵ月に1度はあった | 半年~1年に1度はあった | 特になかった |
経営体制・事業内容・外部環境の変化 | 14.2% | 19.1% | 12.2% | 17.4% | 37.1% |
会社創業 | 14.9% | 16.3% | 8.9% | 13.4% | 46.5% |
会社の現状にあったバリューを策定しておくことで、コロナ禍のような緊急事態が起こった時でもそれに基づいた経営判断ができるとわかります。
経営戦略を立てるのに用いる
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを策定している企業に対し、それを見直した経験別に経営戦略との整合性についてたずねた所、次のような結果でした。
経営理念・ビジョンと経営戦略との整合性を重視している | 経営理念・ビジョンと経営戦略との整合性を重視していない | |
見直した経験がある | 64.1% | 35.9% |
見直した経験がない | 37.6% | 62.4% |
会社の今の状態に合ったバリューを策定することで、経営戦略もそれに合ったものに変更する企業が多いのが伺えます。
従業員の統率やモチベーションアップに用いる
コア・バリューを含む経営理念・ビジョンを浸透させている企業では、バリューを従業員の統率やモチベーションアップに効果的に用いています。
具体的には経営者からバリューについて明確なメッセージを発信し、小まめにコミュニケーションを取ることでバリューを一般の従業員にまで浸透させているため、会社全体が同じ価値観で行動でき、評価もぶれないということです。
参考:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第3節 中小企業経営者の経営力を高める取組」
中小企業におけるバリューの例
デジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」の運営などを手掛けるピクスタ株式会社のバリューは、「ピクスタウェイ」として次の6つがホームページに掲げられています。
・Win-Win-Win
・スケール化のために仕組み化
・インパクト志向
・変化適応と変化創出
・全員イニシアチブ
・セルフバージョンアップ
それぞれの詳細も記載されていますが、言葉を見ただけでも行動基準や価値観としてわかりやすいのが特徴的です。
またビジョンの「世界中の才能をつなげるクリエイティブプラットフォームを創造していく」と照らし合わせると、従業員がどのような行動をすればよいのかが明確にわかる仕組みとなっているのがこのバリューの優れている点だと言えるでしょう。
株式会社KAKERUでは中小企業におけるバリュー策定をサポートしています
株式会社KAKERUでは、中小企業においては目的とゴール、現在地を明確にしないとその先の計画や実行が最短距離にならないと考えているため、企業の現状に合わせたバリュー策定を重要なことだと捉えています。
そのため、株式会社KAKERUでは業種や社歴が多種多様な中小企業の経営を側でサポートしてきたメンバーがバリュー策定をサポートしているのです。
ビジョンは自分の理想としてイメージできるけれど、ある程度具体性の必要なバリューとなると策定が難しいと感じる人も多いため、漠然とした相談からそれを言語化できるようにお手伝いをさせていただきます。
自社の従業員にとって理解しやすく、行動に移しやすいバリューを策定したいなら、ぜひ次のページもごらんください。
〇〇”がさらに楽しくなる仕掛けを創る – 株式会社KAKERU (kaxeru-office.com)
まとめ
バリューとは企業や組織で共有される価値観や方針、判断基準を指しますが、中小企業では自社の現状に合わせて策定することで、人事評価、採用、経営判断などさまざまな場面で活用できます。
この記事も参考にして、ぜひバリューの策定に積極的に取り組んでみてください。