スモールビジネスが軌道に乗って少し従業員が増えたので、人事制度の見直しをしようと思うけれど、何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事では、スモールビジネスにおける人事制度のトレンドから作り方の手順まで詳しく解説します。
人事制度とは?
人事制度とは経営資源である「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」のうち「ヒト」を管理する制度のことを指します。
人事制度は次の3つの柱で成り立っています。
3つの柱 | 概要 | 具体例 |
等級制度 | ・従業員を序列化する仕組み | ①職能資格制度 ・職務遂行能力を判断してランク付けし、ランクに応じて部署の配置や人事評価、昇進・昇格などを決める制度 ②職務等級制度 ・業務の価値を点数化しそれに応じて給与や賞与を決める制度 ③役割等級制度 ・仕事における役割の価値を明確化しそれに応じて序列や等級を決める制度 |
評価制度 | ・期間を区切って従業員の行動や成果を評価する仕組み | ①能力評価 ・職務能力に基づいて評価する仕組み ②職務評価 ・職務の相対的な価値に基づいて評価する仕組み ③役割評価 ・従業員の役割に基づいて評価する仕組み ④成果評価 ・従業員の挙げた成果に基づいて評価する仕組み |
報酬制度 | ・給与や賞与などの報酬の仕組み | ①基本給 ②手当 ③賞与 ④退職金 |
企業が従業員をさまざまな角度から評価し、処遇を決めているのがわかります。
人事制度の現状
2021年に産労総合研究所が発表した「第8回 人事制度等に関する総合調査」では企業3,000社を対象に人事制度を含む12のテーマでアンケートを行い、人事制度の3つの柱のうちの1つである等級制度の導入状況を聞くと次のような結果でした。
等級制度の種類 | 1998年 | 2010年 | 2020年 |
職能資格制度 | 73.4% | 68.9% | 72.0% |
役割等級制度 | ー | 47.1% | 59.7% |
職務等級制度 | 51.7% | 50.3% | 50.3% |
職能等級制度と職務等級制度はあまり導入数に変化がありませんが、役割等級制度の導入に積極的な企業が増加しているのが現状だとわかります。
人事制度のトレンド
人事制度には時代背景に応じてトレンドが変化していきますが、スモールビジネスにも取り入れたい最新のトレンド評価手法を9つご紹介します。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、仕事で高いパフォーマンスを出す人の行動特性(コンピテンシー)を職務ごとに定義し、それを基に行う人事評価のことです。
メリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・効率的に人材育成ができる ・評価がしやすくなる ・評価への納得度が高くなる ・戦略的な人材マネジメントがしやすくなる | ・コンピテンシーの定義から始めないといけないため導入に手間がかかる ・評価基準が明確なため環境や時代の変化に対応しにくい |
コンピテンシー評価は、人事制度の見直しを定期的に行い、コンピテンシーを更新しながら運用できる企業におすすめです。
360度評価
360度評価とは上司・同僚・部下などの複数人の評価者で従業員を評価する人事評価のことです。
360度評価のメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・客観的に評価できる ・評価への納得度が高くなる ・従業員が課題に気付き成長しやすい ・ミッションやバリューが浸透する ・フィードバックしあえる企業風土が芽生える | ・評価に人手や時間が多くかかる ・主観的な評価や一貫性のない評価になる場合がある ・部下からの評価を気にして上司の評価が甘くなる |
360度評価はこれからミッションやバリューを浸透させ、風通しのよい社風を作りたい企業におすすめです。
OKR
OKRとは「Objectives and Key Results」の頭文字を取った言葉で、会社の目標と個人がその目標を達成するために必要な成果を結び付け、成果の達成度に応じて評価する人事評価のことです。
OKRのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・会社の目標に向かって個人が何をすればよいかが明確化されるため全員で同じ方向を目指せる ・コミュニケーションが活発になる ・モチベーションが上がる | ・定着するまでに手間や時間がかかる ・複数の部署をまたいで仕事をする従業員は挙げなければならない成果が多くなる |
OKRは会社のビジョンは定められているものの、現場にあまり浸透していない企業におすすめです。
MBO
MBOとは「Management by Objectives」の頭文字を取った言葉で、目標管理制度を指し会社の方針と個人の目指す方向性をすりあわせて目標を設定し、その達成度で評価する人事評価です。
MBOのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・従業員のモチベーションが上がる ・目標を達成するための過程が明確になる ・従業員へのフィードバックがしやすい | ・部門によっては目標設定しにくく、評価者の負担も大きい |
MBOは組織全体のパフォーマンス向上を図りたい企業におすすめです。
バリュー評価
バリュー評価とは会社が設定したバリュー=企業や組織で共有される価値観や方針、判断基準をどれだけ実践できたかによって評価する人事評価です。
バリュー評価のメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・従業員エンゲージメントが上がる ・従業員の定着率が上がる ・組織力の強化につながる | ・公平で納得感のある評価がしにくい |
バリュー評価は従業員の定着率を上げて、強い組織を作りたい企業におすすめです。
リアルタイムフィードバック
上司が部下に対し、都度または1〜2週間に1度などの高い頻度でフィードバックを行う人事評価です。
リアルタイムフィードバックのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・状況に応じて軌道修正がしやすい ・従業員のモチベーションが上がる ・コミュニケーションが活発になる | ・上司の負担が大きい |
リアルタイムフィードバックは変化の大きい業界で成長を目指す企業におすすめです。
ノーレイティング
ノーレイティングとは数値や記号でランク付けせずに従業員を評価する人事評価です。
ノーレイティングのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・コミュニケーションが活発になる ・外部環境の変化に対応しやすい ・目標設定や評価の納得度が高まる | ・上司の負担が大きい |
ノーレイティングは密なコミュニケーションを重視しリアルタイムに従業員を評価したい企業におすすめです。
ピアボーナス
ピアボーナスとは仲間を意味する「peer」と報酬を意味する「bonus」の組み合わせでできた言葉で、従業員同士が都度お互いを評価し合い、ポジティブなフィードバックを行う人事評価でGoogleでも導入されています。
ピアボーナスのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・コミュニケーションが活発になる ・従業員のモチベーションが上がる ・企業イメージの向上につながる | ・ポジティブなフィードバック目当ての行動が増える |
ピアボーナスは従業員だけではなく対外的にもメリットのある人事制度を作りたい企業におすすめです。
パフォーマンス・デベロップメント
パフォーマンス・デベロップメントとは上司が部下の「成長」に着目して評価する人事評価です。
パフォーマンス・デベロップメントのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・タイムリーなフィードバックができる ・コミュニケーションが活発になる ・状況に応じて軌道修正がしやすい | ・上司の負担が大きい |
パフォーマンス・デベロップメントは上司と部下のコミュニケーション不足を感じていて、その解消に取り組みたい企業におすすめです。
スモールビジネスにおける人事制度の作り方のポイント
スモールビジネスにおける人事制度の作り方のポイントを3つご紹介します。
求める人物像を明確にする
人事制度を作る前に、自社で求める人物像を明確に示すことが大切です。
例えば「高い実務能力を持つ人」と定義づけたとしても「高い」をどのように捉えるかは個人差があるため、このような人物像は明確とは言えません。
社内で議論しながら、イメージしやすい具体的な人物像を作りましょう。
ビジョンやミッションを実現できる人事制度にする
スモールビジネスにおいては組織がそれほど複雑なわけではないので、ビジョンやミッションを実現できる人事制度にすると、従業員にも納得してもらいやすくなります。
大企業とは異なり、スモールビジネスでは従業員が直接経営者の思いや考えを聞く機会が多いためです。
なるべく経営者の定めたビジョンやミッションを見える化した、シンプルでオープンな人事制度を目指しましょう。
ミッションについてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
ミッションとは?意味からスモールビジネスでの活かし方まで詳しく解説 – KAKERU Co., Ltd (kaxeru-office.com)
会社の成長に合わせた人事制度にする
企業は創業してから少しずつ時間をかけて成長をしていきますが、成長の過程に合わせた人事制度の変更が必要です。
従業員の人数が増加したから変更するというのではなく、成長過程における課題の変化に応じてどのような評価方法がふさわしいのかをあらためて検討し直すのがよいでしょう。
課題に対して、どのような人事制度があればより従業員が成長するのかという観点から検討するのが大切です。
株式会社KAKERUではスモールビジネスの「今」に合った人事制度作りをサポートしています
株式会社KAKERUでは、スモールビジネスの「今」に合った人事制度作りをサポートしています。
前の項目でもご紹介した通り、同じスモールビジネスでも個別に成長段階は異なります。
そのため現状抱えている課題をクリアするための行動を取れた従業員を評価するには、その段階に合った人事制度が必要なのです。
この記事を読んで人事制度の見直しをしてみようかという気になった方は、次のページもごらんください。
”〇〇”がさらに楽しくなる仕掛けを創る – 株式会社KAKERU (kaxeru-office.com)
まとめ
人事制度とは経営資源である「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」のうち「ヒト」を管理する制度のことを指し、求める人物像を明確にし、会社の成長に合わせた制度にするのが大切です。
この記事も参考にして、ぜひ人事制度作りに積極的に取り組んでみてください。