スモールビジネスを展開する上では月次決算を行うことが経営判断に役立つと聞いたけれど、経理の知識がないので内容や読み方がよくわからないと困っている人はいませんか?
この記事ではスモールビジネスを行う人が知っておきたい月次決算の定義からメリット、読み方まで詳しくご紹介します。
月次決算とは?

月次決算とは月ごとに行う決算業務のことで、毎月の会計を締めた後に年次決算と同じような会計処理を行います。
月次決算と年次決算の違いを表にまとめてみました。
法律 | 目的 | 期限 | |
月次決算 | ・法律により実施が義務付けられていない | ・経営状態を早期に把握し今後の経営方針や戦略を考える・経営課題の早期発見・経営目標達成に向けた進捗を管理する・年度決算における利益を予測する・精度の高い年次決算を行う・帳簿の整理を確実に行う・(融資を申し込む場合)金融機関への資料提出 | ・任意 |
年次決算 | ・株式会社においては会社法435条で実施が義務付けられている・必要な書類は会社法435条と会社計算規則59条で貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表と定められている | ・株主、取引先、顧客、金融機関といったステークホルダー(利害関係者)に、1年間の経営状況を明らかにする・納税額を決定する・翌年度の経営方針を定める | ・期末の翌日から2ヵ月以内 |
月次決算は法律により義務付けられてはいませんが、経営状態の細やかな現状分析や早期の戦略見直しに役立つことがわかります。
スモールビジネスにおいて月次決算を行うメリット

スモールビジネスにおいて月次決算を行うメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
タイムリーな経営判断ができる
スモールビジネスにおいて月次決算を行うと、タイムリーな経営判断をすることができます。
当初の予算である目標と実績を数値で管理することを予実管理と言いますが、月次決算を行っている場合、年度予算の根拠となる月次予算と月次の実績である月次決算とを比較することで、目標が達成できているかを把握でき、もし目標未達の場合何が原因かを分析し改善することもできます。
もしスモールビジネスにおいて年次決算しかしていなかったとすると、年度末を過ぎてから決算をするため、会社が成果を挙げているのかを把握するまでに時間がかかります。
しかし月次決算では月末後すぐに決算に取り掛かるため、年次決算ほど会社の状況を知るのに時間はかかりません。
スモールビジネスにおいて適切にPDCAを回すためには、次の3つの理由から月次決算を用いて、記憶が新しいうちに振り返りをするのが重要だと言えます。
・時間が過ぎるにつれ記憶は失われていくため
・行動を変えるタイミングやスピードが遅くなるため
・最新の情報を基に適切な経営判断をするため
また期中に設備投資や融資の依頼など大きな経営判断を迫られた時でも、月次決算をしておけばより会社の状態に即した判断ができるでしょう。
金融機関が融資の判断材料にできる
スモールビジネスにおいて月次決算を行うと、金融機関がそれを融資の判断材料に用いることができます。
2021年に中小企業庁が発表した「中小企業白書」によると、中小企業が新型コロナウイルス感染症の流行後に活用した支援策は次の通りです。
従業員規模20人以下 | 従業員規模21人~50人 | 従業員規模51人~100人 | 従業員規模101人以上 | |
持続化給付金 | 49.7% | 37.4% | 29.7% | 24.3% |
雇用調整助成金 | 30.1% | 41.0% | 46.6% | 52.5% |
政府系金融機関による実質無利子・無担保融資 | 28.6% | 29.5% | 28.8% | 23.9% |
民間金融機関による実質無利子・無担保融資 | 28.1% | 31.1% | 26.2% | 18.1% |
いずれも利用していない | 18.0% | 19.5% | 22.2% | 22.5% |
会社の経営をしていく上では、新型コロナウイルスのような不測の事態が起こった場合でも、できるだけそれに対応できるように準備しておくことが重要だと言えるでしょう。
新型コロナウイルスの影響があった中小企業では多くの企業が無利子・無担保融資を利用していますが、このような時も月次決算でお金の出入りをきちんと管理していれば、早急に申し込みができるというわけです。
節税対策が施しやすくなる
スモールビジネスにおいて月次決算を行うと、節税対策がしやすくなります。
例えば年次決算しかしていない場合納税額の見込みを期中に知るのは難しいですが、月次決算をしていれば、年度末に近づくほど年次決算が高い精度で予想できるようになるため納税額の見込みが経ち、それに応じた節税対策も早めに行えるということです。
ただし税法は複雑な上毎年改正が行われているため、節税対策として行ったつもりが実は脱税だったということのないように注意しましょう。
スモールビジネスを行う人が知っておきたい月次決算の読み方

スモールビジネスを行う人が知っておきたい月次決算の読み方を貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)、損益計算書(そんえきけいさんしょ)、キャッシュフロー計算書の3つにわけてご紹介します。
前提として、月次決算を読む時は1か月の結果だけを読むのではなく、毎月の月次決算を比較して読むのが大切だということを覚えておきましょう。
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)の読み方
貸借対照表とはバランスシートとも呼ばれ、次の3つを読み取ることができます。
・会社の規模
・会社の資産や負債の内容
・会社の純資産(安全性に関する情報)
貸借対照表はお金の運用を示す左側(資産)とお金の調達を表す右側(負債+純資産)の2つのゾーンにわかれていて、資産=負債+純資産で運用と調達の金額が左右で一致することからバランスシートと呼ばれるようになったのです。
つまり貸借対照表で言うと右側から左側にお金が流れるイメージです。
貸借対照表の左側と右側それぞれに使われている用語の意味を表にまとめてみました。
お金の運用を示す左側(資産) | お金の調達を表す右側(負債+純資産) | ||
用語 | 意味 | 用語 | 意味 |
資産 | ・会社が持っている財産で流動資産(現金・預金、商品、売掛金など))と固定資産(建物、土地、備品など)の2つにわかれる | 負債 | ・会社が持っている支払義務や返済義務で流動負債(買掛金、短期借入金など)と固定負債(社債、長期借入金など)の2つにわかれる |
純資産 | ・会社が調達してきた資金のうち返済が不要なもので資本金、株主資本などが含まれる |
貸借対照表には他にもさまざまな項目がありますが、まずは上記の基本をしっかり理解し、会社のお金の流れをイメージできるようになることが大切です。
損益計算書(そんえきけいさんしょ)の読み方
損益計算書とは(P/L)とも呼ばれ、次の2つを読み取ることができます。
・会社の経営成績
・売上を上げるのにかかった費用
損益計算書は収益、費用、利益の3つの要素で構成されているためそれぞれに使われている用語の意味を表にまとめてみました。
損益計算書の構成要素 | 概要 |
収益 | ・会社の利益を増加させる要因のことで売上、受取利息などが含まれる |
費用 | ・会社の利益を減少させる要因のことで仕入、人件費などが含まれる |
利益 | ・(収益ー費用)で表される数値で当期のもうけを意味する |
収益、費用、利益の中にはたくさんの専門用語が含まれますが、その中でも利益に含まれる用語の種類が多いので、間違えないよう1つ1つ意味を確認しながら読むのがおすすめです。
キャッシュフロー計算書の読み方
キャッシュフロー計算書とは現金の増減とその理由を読み取ることができますが、貸借対照表や損益計算書と比較して簿記を理解していないと読むのが難しいとされます。
しかし「企業の活動ごとに現金の増減とその理由を記載している」と捉えるとキャッシュフロー計算書が読みやすくなります。
キャッシュフロー計算書に記載されている企業活動は次の3つです。
企業活動の種類 | 概要 | 記載される内容例 |
営業活動 | ・本業の営業活動による現金の増減とその理由 | ・商品やサービスを販売して増えた現金・広告宣伝費で減った現金 |
投資活動 | ・投資による現金の増減とその理由 | ・設備投資で減った現金・株を売却して増えた現金 |
財務活動 | ・資金調達と返済による現金の増減とその理由 | ・上場して増えた現金 |
最後に営業活動、投資活動、財務活動それぞれの活動によってどれだけ現金が増減したかを見ると、企業における現金の増減とその理由がわかる仕組みです。
スモールビジネスにおける月次決算の使い方

スモールビジネスにおいては、月次決算をの結果をどのように使えば今後の経営に活かせるのでしょうか。
ポイントは次の5つです。
・売上・経費・収益における月次決算の数字×12か月を年間規模として覚えておく
・売上や経費を毎月見直す
・資金繰りの見通しを立てる
・投資を計画的に行う
・事業のボトルネックとなっている要素を発見し早期に対策を施す
月次決算をただ続けるのではなく、その分析結果を基にして行動することがスモールビジネスにおける持続的な成長へとつながります。
株式会社KAKERUでは月次決算を「経営の振り返り」と捉えています

株式会社KAKERUでは月次決算をスモールビジネスにおける「経営の振り返り」と捉えています。
これは年次決算のような長いスパンではなく、月次決算を短いスパンかつ習慣的に行うことにより、経営におけるPDCAを早く正確に回せるようになることからです。
ある程度の手間や時間が必要ですが、タイムリーな経営判断、金融機関の融資の判断材料、節税対策などスモールビジネスに活かせる局面が多く、新型コロナウイルスのような不測の事態が起こった際の備えともなります。
月次決算に対し最初は敷居が高いと感じていた方にも、株式会社KAKERUは寄り添い、数々のサポートを行ってきました。
そのノウハウを、あなたもちょっとのぞいてみませんか。
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まとめ

月次決算とは月ごとに行う決算業務で、毎月の会計を締めた後に年次決算と同じような会計処理を行うのが特徴的だと言えるでしょう。
この記事も参考にし、ぜひスモールビジネスにおいても積極的に月次決算を活かしてみてください。