最近取引先から電子契約に対応してほしいと言われているけれど、法的効力があるかどうかわからないため不安に感じているという人はいませんか?
この記事では電子契約の普及率からスモールビジネスで導入するメリット・デメリットまで詳しく解説します。
電子契約とは?
電子契約とは従来紙の契約書に印鑑を押して行っていた契約手続きを、インターネット経由で電子契約書に電子署名して行うことを指します。
1998年に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」の第3条では、電子契約書に電子署名をすることが、紙の契約書に印鑑や署名をすることと同じ法的効力があると見なされると定めているのです。
これを受けて、内閣府のホームページでは電子署名を普及させるために地方自治体、各府省でどのように書面規制、押印、対面規制の見直しを進めていくかについてのマニュアルや方針を掲載しています。
また法務省のホームページでは、民間における押印慣行についてその見直しに向けた自律的な取り組みが進むよう、押印についてのQ&Aを掲載しているのです。
このことから日本においては法律に基づき、電子契約が官公庁から民間へと少しずつ普及してきているのがわかります。
参考:e-GOV法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」
電子契約の普及率
2022年3月17日に一般社団法人日本経済社会推進協会が発表した「企業IT利活用動向調査2022」では、2020年に101億円だった電子契約市場は2025年度には440億円となり、年平均市場成⻑率は34.3%と予想しています。
また「企業IT利活用動向調査2022」では、以下の条件を満たす982人を対象にアンケート調査を行いました。
・従業員2名以上の国内企業の勤務者であること(⼩規模事業者も対象とする)
・情報システム、経営企画、総務・⼈事、業務改⾰系部⾨のいずれかに所属していること
・IT戦略策定または情報セキュリティの従事者であること
・係⻑相当職以上の役職者であること
アンケートの結果では、電子契約の利用状況は次のようなものだったのです。
電子契約の利用状況 | 割合 |
電子契約サービス事業者の電子署名を電子契約で採用している(立会人型) | 18.4% |
契約当事者の電子署名を電子契約で採用している(当事者型) | 26.0% |
電子署名を利用しない電子契約を採用している | 10.4% |
電子契約サービス事業者の電子署名を電子契約で行う方法と契約当事者の電子署名を電子契約で行う方法の両方を採用している(立会人型と当事者型両方) | 10.0% |
電子署名を利用しているかわからないが電子契約を利用している | 4.9% |
電子契約をまだ利用していないが利用するよう準備・検討中である | 14.7% |
電子契約をまだ利用しておらず利用予定もない | 15.6% |
約70%の企業が何らかの形で電子契約を利用していますが、2021年の調査で約67%だったのと比較すると、普及率がそれほど大きく伸びていないことがわかります。
参考:一般財団法人日本情報経済社会推進協会「JIPDEC IT-Report 2022 Spring」
電子契約が普及した背景とは?
電子契約が普及した背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
法的な環境整備がされた
電子契約は、1998年に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で法的な環境整備がされたことが、普及を大きく後押ししたと言えるでしょう。
「電子署名及び認証業務に関する法律」の第3条で、電子契約書が紙の契約書と同じ法的効力があると定められたのは先ほどご紹介した通りです。
一方「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」の第7条と第8条では、電子取引を行った際の記録の保存についてや、財務省令で定める要件を満たせば電子データのまま税務調査に対応できることなどが定められました。
これらの2つの法律が施行されたことで、特に税法の求めがあり裁判の証拠ともなる企業間契約において電子契約が普及することとなったのです。
参考:e-GOV法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」
国土交通省による社会実験が行われた
2019年から2022年まで、国土交通省による「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」が行われました。
これは宅地建物取引業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明を、テレビ会議などのITを活用して行い、重要事項説明書を紙以外にも電子書面で交付するという手続きを加える社会実験で、307社が登録事業者として参加しました。
登録事業者は社会実験の結果検証を目的として重要事項説明直後にアンケートを記入することとなっていたため、結果が公表されれば電子契約導入における課題やメリットが明らかになり、社会的な関心もさらに高まるでしょう。
参考:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」
企業のニーズに合っていた
2020年4月27日に一般社団法人日本経済社会推進協会が発表した「企業IT利活用動向調査2020」では、以下の条件を満たす人878人に対して今後電子化したい契約書についてアンケート調査を行いました。
・従業員数50⼈以上の国内企業の勤務者であること
・情報システム、経営企画、総務・⼈事、業務改⾰系部⾨のいずれかに所属していること
・IT戦略策定または情報セキュリティの従事者であること
・係⻑相当職以上の役職者であること
結果は次の通りです。
項目 | 割合 |
取引基本契約書 | 44.4% |
システム開発委託契約書(ソフトウェア開発委託契約書) | 37.3% |
ライセンス契約書 | 36.5% |
業務委託契約書(請負契約書、準委任契約書) | 35.3% |
秘密保持契約書 | 31.5% |
他にも多岐に渡る種類の契約書を電子化したいとの声があったため、電子契約は企業のニーズに合っているのがわかります。
参考:一般財団法人日本情報経済社会推進協会 IT-Report「企業IT利活⽤動向調査2020」集計結果 ー電⼦契約の利⽤状況についてー」
スモールビジネスで電子契約を導入するメリット
スモールビジネスにおいて電子契約を導入するメリットは次の7つです。
・印紙税、郵送料、人件費などの契約にかかる経費が節減できる
・契約業務が効率化できる
・契約書の保管が容易になりスペースも節約できる
・コンプライアンスやセキュリティ対策の強化につながる
・リモートワークやテレワークでも契約ができる
・契約更新の確認もれが防止できる
・似た契約書の作成が効率化できる
スモールビジネスでは利益を確保するため、バックオフィス業務にかかるコストはできるだけ削減するのが望ましいですが、電子契約を導入することで契約業務にかかっていた時間、経費、人件費などのコストを大幅に削減できます。
またリモートワークやテレワークにも適しているため、従業員が働きやすい環境を整える上でもメリットが大きいと言えるでしょう。
スモールビジネスで電子契約を導入するデメリット
スモールビジネスにおいて電子契約を導入するデメリットは次の3つです。
・電子契約に対応していない契約は紙の契約書が必要となる
・取引先に説明し協力を依頼する必要がある
・社内の業務フローの変更が必要となる
今後も法律の改正が進み、電子契約への対応が進む可能性は高いと言えますが、2023年現在では公正証書化しなければいけない契約書や、消費者保護を目的とした契約書は書面での契約が必要とされたり、電子化に制約がかかったりしています。
また電子契約にはできるものの、その利用には取引先の承諾・希望・請求が必要な契約書もあるため、電子化をしたい場合目的や契約内容を取引先に伝え、都度丁寧に説明をしなければなりません。
スモールビジネスで導入するのにおすすめの電子契約サービス
スモールビジネスで導入するのにおすすめの電子契約サービスを3つご紹介します。
特徴 | スモールビジネスでのメリット | |
freeeサイン | ・弁護士が監修している・無料オンライン相談がありホームページから予約をするとZOOMで30分~60分かけて電子契約について相談できる | ・無料プランがあり契約書を1通お試しで作って使い勝手を確認してから利用を開始できる・月に50通送信できて年額¥59,760、月の支払いが¥4,980のLightプランがある |
クラウドサイン | ・電子契約の売上シェア、契約送信件数、市場認知度NO.1・外部サービスとの連携機能があり100以上のサービスと連携可能 | ・Free Planがあり契約書を5通までお試しで作って使い勝手を確認してから利用を開始できる・ホームページから申し込めるオンラインセミナーで使い方や導入方法を学べる |
GMOサイン | ・電子契約の導入企業数、契約者数、導入自治体数NO.1・目的に合わせて追加できるオプション機能が豊富 | ・お試しフリープランがあり送信上限数5件までお試し送信をして使い勝手を確認してから利用できる・豊富な導入事例がホームページに掲載されていて同じ業種の事例を参考にできる |
どのサービスも無料のプランがあり、使い方や機能が自社に向いているかを確認してから有料のプランに切り替えられるのが、スモールビジネスを経営する人にはメリットが大きいと言えるでしょう。
株式会社KAKERUではスモールビジネスにおける電子契約サービスの導入をサポートしています
株式会社KAKERUではスモールビジネスにおける電子契約の導入をサポートしています。
弊社代表のプロフィールにfreee株式会社での勤務経験、税理士、社労士連携といった内容を掲載していることから経理、人事労務領域が専門の会社ではないかと思われる方も多いのですが、バックオフィスにかかる内容は全て対応可能です。
電子契約についても法務領域を含めてご相談が可能ですので、法律上問題のない形でスムーズに電子契約を導入していきたいとお考えの方はぜひご相談ください。
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まとめ
電子契約とは従来紙の契約書に印鑑を押して行っていた契約手続きを、インターネット経由で電子契約書に電子署名して行うことを指しますが、法律の整備や企業のニーズの増加に伴い日本でも少しずつ普及してきています。
この記事も参考に、ぜひ自社に合った形で電子契約を導入してみてください。