2022年に電子帳簿保存法が改正されて、国税関係の帳簿や書類を紙ではなくデータでも保存できるようになったけれど、義務化されると聴いて何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事では、電子帳簿保存法とは何かからスモールビジネスにおいて今から始めた方がよい準備の内容まで詳しく解説します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、1998年に施行された各税法で保存が義務付けられている帳簿や書類を電子データで保存する際のルールなどを定めた法律で、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と言います。
電子帳簿保存法では、主に次の2つのことを定めています。
・税法上保存が義務付けられている紙の帳簿や書類を、一定の要件を満たせば電子データやスキャンデータで保存することを認める
・税法上保存が義務付けられていない電子取引のデータの保存義務を定めている
電子帳簿保存法で定められた保存方法は次の3種類です。
保存方法 | 法律 | 概要 |
電子取引の保存 | 電子帳簿保存法第7条 | 電子的に授受した取引情報をデータで保存すること |
電子帳簿・電子書類の保存 | 電子帳簿保存法第5条 | 電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存すること |
スキャナ保存 | 電子帳簿保存法第4条 | 紙で受領・作成した書類を画像データで保存すること |
国税庁のホームページに電子帳簿保存法の関係法令や告示、通達などがまとめてあるので詳細を知りたい人は目を通してみましょう。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus「どうすればいいの?『電子帳簿保存法』」
電子帳簿保存法の改正の歴史
電子帳簿保存法は、時代の流れやニーズの変化に合わせてどのように改正されてきたのでしょうか。
内容の変遷は次の通りです。
改正された年 | 概要 |
2005年 | ・紙の国税関係書類について一定の要件を満たせばスキャナ保存をしてもよいことになる・領収書と請求書は3万円未満の上限あり・電子データの改ざんを防ぐために電子署名が義務付けられる |
2015年 | ・スキャナ保存について領収書と請求書の3万円未満の上限がなくなり、電子署名が不要となる・入力時のダブルチェックのルールを定めた適正事務処理要件が追加されタイムスタンプが義務化される |
2016年 | ・スキャナ保存についてデジカメやスマホで撮影した画像も認められる・書類受領後3日以内の署名とタイムスタンプ(ファイルなどに記録されているデータの作成日時)が義務化される・領収書などを受領者などが読み取る場合の要件が整備される・小規模事業者の特例を創設 |
2019年 | ・過去の書類についても一定の要件を満たせばスキャナ保存が可能となる |
2020年 | ・受領者側がデータを改ざんできないクラウドシステムなどを利用すればタイムスタンプが不要となる |
2022年 | ・電子帳簿保存制度を導入する時の事前承認制度を廃止・タイムスタンプ要件、検索要件の緩和・適正事務処理要件を廃止・不正に対するペナルティの強化 |
電子帳簿保存法が改正された歴史を振り返ると、技術の進歩に合わせて法律の改正を繰り返すことで正確性と利便性の両方を維持してきたのがわかります。
電子帳簿保存法の対象企業と対象書類
電子帳簿保存法は全ての企業・個人事業主が対象となり、対象書類は次の通りです。
対象書類の分類 | 具体例 | 電子帳簿保存法 | 保存方法 | ||
国税関係帳簿 | ・仕訳帳 ・総勘定元帳 ・その他の帳簿(補助簿)など | ・第4条1項 | ・電子帳簿、電子書類の保存 | ||
国税関係書類 | 決算関係書類 | ・貸借対照表 ・損益計算書 ・棚卸表 ・計算、整理または決算に関して作成されたその他の書類 | ・第4条2項 | ||
取引関係書類 | 自分が作成する書類の写しなど | ・見積書 ・契約書 ・請求書 ・領収書など | |||
相手方から受領した書類など | ・見積書 ・契約書 ・請求書 ・領収書など | ・第4条3項 | ・スキャナ保存 | ||
電子取引 | ・EDI取引(電子データの自動交換が用いられた取引) ・インターネット取引 ・電子メール取引 ・クラウド取引など | ・第7条 | ・電子取引の保存 |
相手方から紙でもらった書類などの保存方法は「スキャナ保存」なので紙で保存しても電子データで保存しても構いませんが、電子データでもらった書類の保存方法は「電子取引の保存」なので要件を満たして電子データでの保存が必要になるということです。
参考:e-GOV法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」
スモールビジネスにおいて電子帳簿保存法への対処は何から始めるか
電子帳簿保存法で定められた保存方法のうち、電子帳簿・電子書類の保存、スキャナ保存は紙での保存も選ぶことができますが、2022年1月1日から行われる電子取引については電子データの保存を行う必要があります。
そのためスモールビジネスにおいても、まず電子取引の保存方法について理解し、定められた方法で保存ができるよう準備を進めるのが望ましいでしょう。
電子取引の保存制度についてご紹介します。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus「どうすればいいの?『電子帳簿保存法』」
参考:国税庁「電子取引関係」
電子取引とは
電子取引とは紙ではなく電子情報で日付や取引先、金額などの取引情報をやり取りしたもののことです。
具体的には次の7種類が例として挙げられます。
電子取引の種類 | 概要 |
電子領収書 | ・電子メールで請求書や領収書などのデータ(PDFファイルなど)を受け取る |
スクリーンショット | ・インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書などのデータ(PDFファイルなど)、もしくはホームページ上に表示される請求書や領収書などのスクリーンショットを利用する |
クラウドサービス | ・電子請求書や電子領収書の送受信ができるクラウドサービスを利用する |
キャッシュレス決済 | ・クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマホアプリによる決済データなどを活用したクラウドサービスを利用する |
EDIシステム | ・電子データの自動交換ができるシステムを利用する |
FAX複合機 | ・紙を使わずにFAXの送受信ができる機能を持つ複合機を利用する |
DVDなど | ・DVDなどに請求書や領収書などのデータを保存してやり取りする |
取引先から紙で受け取った領収書などをスキャンしてPDFファイルに変換したものは、電子情報をやり取りしていないため、電子取引にはあたらないことを覚えておきましょう。
電子取引の保存制度の概要
税法では事業者が紙で取引先から受け取った注文書、請求書、領収書など、取引先に紙で送付した請求書などの控えはそのまま紙で保存するのがルールです。
一方事業者が電子取引を行った場合、その電子データを電子帳簿保存法の第7条に基づき一定の方法で保存しなければなりません。
2022年1月1日以降、電子取引については全て要件を満たし電子データのまま保存することが義務化されたのを覚えておきましょう。
電子取引の保存要件
電子帳簿保存法で定められている電子取引の保存要件は次の4つです。
保存要件の種類 | 概要 |
関係書類の備付け | ・電子データを確認するのに必要なシステムの概要(データ作成ソフトのマニュアルなど)を備える |
見読可能装置の備付け | ・電子データが確認できるディスプレイやアプリなどを備える |
検索機能の確保 | ・電子データを「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる状態にしておく |
電子取引の電磁的記録 | ・電子データが真実であるということを担保するため ①タイムスタンプが付与された電子データを受け取る ②電子データに速やかにタイムスタンプを付与する ③電子データの訂正・削除が記録されるか禁止されたシステムで電子データを受け取って保存する ④不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用する のいずれかを行う |
電子データの保存場所と保存期間は紙の場合と同じです。
電子取引の保存方法
電子取引の種類別に、適した保存方法をご紹介します。
電子取引の種類 | 保存方法 |
・電子領収書 ・スクリーンショット | ①タイムスタンプが付与された電子データを受け取る ②電子データに速やかにタイムスタンプを付与する ④不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用するのいずれかを行う |
・クラウドサービス ・キャッシュレス決済 ・EDIシステム | ③電子データの訂正・削除が記録されるか禁止されたシステムで電子データを受け取って保存する |
・FAX複合機 ・DVDなど | ①タイムスタンプが付与された電子データを受け取る ②電子データに速やかにタイムスタンプを付与する ④不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用するのいずれかを行う |
電子取引の種類に関わらず、電子データは各税法に定められた保存期間が満了するまで保存しなければならないことを覚えておきましょう。
電子取引を保存する上での注意点
企業によっては2022年1月1日が事業年度の途中にあたるかもしれませんが、2022年1月1日以降に行う電子取引については、電子帳簿保存法改正後の保存要件に従って保存しなければなりません。
このことから2021年12月31日までに行われた電子取引と、2022年1月1日以降に行われた電子取引では保存要件が異なるため注意が必要です。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus「どうすればいいの?『電子帳簿保存法』」
株式会社KAKERUでは電子帳簿保存法対応についてのご相談も承ります
スモールビジネスは電子帳簿保存法の対象企業に含まれ、電子取引から対処を進めるのが望ましいと理解したけれど、自社で行うとなると何から始めたらよいかイメージがわかないという方もいらっしゃるでしょう。
株式会社KAKERUのご支援はそんな方のために、まずはお困りごとの内容をじっくりとお伺いすることからスタートいたします。
電子帳簿保存法と一口に言っても、その対処をする上で最適な方法は企業によって細かく異なるためです。
言語化しにくい課題は何なのかをしっかりと把握し、解決につなげるのも株式会社KAKERUの強みの1つです。
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まとめ
電子帳簿保存法とは、各税法で保存が義務付けられている帳簿や書類を電子データで保存する際のルールなどを定めた法律で、スモールビジネスにおいては2022年1月1日以降義務化された、電子取引の保存制度への対応から取り組むのが望ましいでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ電子帳簿保存法への理解を深めてみてください。