スモールビジネスを立ち上げて従業員を雇用したため、今年から年度更新の手続きをしなければならなくなったけれど、内容がよくわからず困っている人はいませんか?
この記事では、年度更新をするにあたって知っておきたい計算方法から便利なツールまで詳しくご紹介します。
年度更新とは?
年度更新とは、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)に基づいて、年に一度労働保険料(労働者災害補償保険と雇用保険)を申告、納付する手続きのことです。
具体的には労働保険徴収法の第19条に基づき、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付、第15条に基づき今年度の概算保険料を納付するための申告・納付を行うのです。
2023年度の年度更新の手続きは6月1日〜7月10日に行うこととなっています。
参考:e-GOV法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」
年度更新のやり方
年度更新のやり方について、申告書を作成するまでの流れ、申告書の作成、申告書の提出、保険料の納付という4つの手順にわけてご紹介します。
申告書を作成するまでの流れ
年度更新は労働保険年度更新申告書を提出することで行いますが、2023年度は事業の種類によって申告書の作成の流れが次のように異なります。
事業の種類 | 事業の概要 | 事業の具体例 | 申告書作成の流れ |
一元適用事業 | ・労災保険と雇用保険をまとめて(一元的に)申告・納付する事業 | ・二元適用事業以外の事業 | ①「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」に賃金の総額を記入し、前期(2022年4月1日~2022年9月30日)と後期(2022年10月1日~2023年3月31日)を別に集計をする ②「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」の一番下にある令和4年度確定保険料算定内訳」に前期分と後期分の「保険料算定基礎額」と「確定保険料額」を記入する ③「保険料算定基礎額」と「確定保険料額」を労働保険年度更新申告書の一番下にある「㉜期間別確定保険料算定内訳」と中段にある「確定保険料算定内訳」にそれぞれ記入する |
二元適用事業(雇用保険) | ・労災保険と雇用保険を別々に(二元的に)申告・納付する事業 | ・都道府県や市町村の行う事業 ・都道府県に準ずるものや市町村に準ずるものが行う事業 ・港湾運送の事業 ・農林水産の事業 ・建設の事業 | ・同上 |
二元適用事業(労災保険) | ・同上 | ・同上 | ・例年と同じ |
自分の行っている事業が一元適用事業と二元適用事業のどちらなのかをまず確認し、厚生労働省のホームページで確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表の書き方に目を通し、作成しておきましょう。
申告書の作成
年度更新をするには労働保険年度更新申告書を提出する必要がありますが、厚生労働省のホームページでは作成を支援するため、書き方のマニュアルと確定保険料の計算支援ツールを公開しているので、作成時は必ず目を通しましょう。
例として、一元適用事業の事業者が労働保険年度更新申告書を書く時のポイントをいくつかご紹介します。
労働保険年度更新申告書の項目 | 記入のポイント |
④「常時使用労働者数」 | ・2023年3月31日1年間の1ヵ月平均使用労働者数を記入する |
⑤雇用保険被保険者数 | ・「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」に従って記入する |
⑧確定保険料・一般拠出金算定基礎額 | ・「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」で算出した保険料算定基礎額を記入する |
⑩確定保険料・一般拠出金額 | ・「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」で算出した保険 料額を記入する |
⑫保険料算定基礎額の見込額 | ・2023年4月1日~2024年3月31日までに労働者に支払われる予定の賃金総額の見込額(通勤手当や賞与を含む) |
⑭概算保険料額 | ・⑫保険料算定基礎額の見込額×⑬保険料率を記入する |
⑱申告済概算保険料額 | ・事業主が2022年度に申告した概算保険料額を記入する |
㉕事業又は作業の種類 | ・会社で行っている事業や作業の種類を記入する |
労働保険年度更新申告書の書き方のマニュアルには、事例別の記入例も参考として掲載されているため、必要な人は確認するのがおすすめです。
またマニュアルだけではわかりにくいと感じた人は、YouTubeの厚生労働省公式チャンネルで、動画による書き方の解説を見てみるのもよいでしょう。
参考:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)」
申告書の提出
労働保険年度更新申告書の書き方に沿って書類の作成が終了したら、提出用の1枚目を次の3つの方法で提出します。
提出方法 | 概要 |
提出先機関へ直接持参 | ・①金融機関②管轄の労働局③管轄の労働基準監督署④社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)のいずれかに直接持参 |
電子申請 | ・e-Gov(電子申請、パブリック・コメント、法令検索などができるポータルサイト)から申告書の入力・送信を行う |
郵送 | ・申告書を管轄の労働局(所在地は送付した封筒の表面に記載)あてに郵送する |
労働保険年度更新申告書の書き方のマニュアルには、申告書の提出方法についても記載があるので、詳細を知りたい人は確認しておきましょう。
保険料の納付
保険料・一般拠出金を納付するには、次の3つの方法があります。
納付方法 | 概要 |
金融機関で納付 | ①金融機関に労働保険年度更新申告書を提出した場合領収済通知書(納付書)を申告書から切り離さずに、金融機関へ提出し保険料・一般拠出金を納付する ②金融機関以外に労働保険年度更新申告書を提出した場合領収済通知書(納付書) を金融機関に提出し保険料・一般拠出金を納付する |
口座振替で納付 | ・口座振替の場合、納付期限は第一期が9月6日、第二期が11月14日、第3期が2月14日 |
電子納付 | ・e-GOVを通じて電子納付をした場合、納付期限は第一期が7月10日、第二期が10月31日、第3期が1月31日 |
窓口での納付もよいのですが、混雑を避け手間や時間をかけずに確実に納付できる口座振替や電子納付をするのがおすすめです。
電子申請と電子納付について詳細を知りたい人は、厚生労働省の「労働保険関係手続の電子申請について」のページも確認してみてください。
2023年度の年度更新のポイント
2023年度分の年度更新を行う時に気を付けたいポイントは次の2つです。
2022年度確定保険料の算定方法
2022年3月30日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立し、2022年度の年度途中から雇用保険率が変更となりました。
これにより一元適用事業と二元適用事業における雇用保険の場合は、2022年4月1日~2023年3月31日までの期間において、前期(2022年4月1日~2022年9月30日)と後期(2022年10月1日~2023年3月31日)の2つにわけて計算する必要があります。
前の項目でもご紹介しましたが、一元適用事業とは労災保険と雇用保険をまとめて一元的に申告・納付する事業で、二元適用事業とは労災保険と雇用保険を別々に(二元的に)申告・納付する事業のことです。
そのため一元適用事業と二元適用事業における雇用保険の年度更新では、次の3つに注意しましょう。
- 「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」では賃金の総額だけではなく、「前期計」と後期計」も記入する
- 「保険料算定基礎額」と「確定保険料額」は前期と後期別々に算出して記入する
- 労働保険年度更新申告書では「期間別確定保険料算定内訳」に確定保険料前期分と後期分をわけて記入する
ただし二元適用事業(労災保険)と一般拠出金、特別加入保険料の場合は計算方法の変更がないので注意しましょう。
様式の変更
前の項目でご紹介した2022年の年度途中からの雇用保険率の変更に伴い、「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」と「労働保険年度更新申告書」の様式が変更されています。
そのため、以前の年度更新時に使用した様式をそのまま使用すると不備となってしまいます。
書類作成時は厚生労働省のホームページの「主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)」のページから最新の様式を入手しましょう。
参考:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)」
株式会社KAKERUでは年度更新の適切な提出をサポートしています
株式会社KAKERUでは年度更新の適切な書類作成、提出をサポートしています。(書類の提出代行等は社会保険労務士法の観点で、弊社での対応はいたしかねます。社会保険労務士をご紹介いたします。)
年度更新は労働保険と雇用保険を毎年正しく納付するために行う手続きなので、スモールビジネスの健全な運営において重要なことだと考えているためです。
労働保険も雇用保険も、従業員が整った環境で前向きにビジネスやそれぞれの業務に取組んでもらうためには欠かせないものだと言えるでしょう。
年度更新の手続きについての不明点が解決せず困っている際は、ぜひ株式会社KAKERUにお声がけください。
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まとめ
年度更新とは、労働保険徴収法に基づいて、年に一度労働保険料(労働者災害補償保険と雇用保険)を申告、納付する手続きのことで、2022年度において年度途中に雇用保険率の変更があったため、2023年度は手続きの変更点があることに注意しましょう。
この記事も参考にして、ぜひ年度更新について理解を深め正しく手続きを行ってみてください。