2023年の税制改正でインボイス制度についてニュースでもよく採り上げられるけれど、スモールビジネスにどのような影響があるのかよくわからない人はいませんか?
この記事ではインボイス制度の概要から対応方法まで詳しく解説します。
インボイスとは?
インボイスとは適格請求書のことで、商品やサービスを売る側が買う側に対して正確な適用税率や消費税額などを伝えるために使われます。
具体的には区分記載請求書(請求書の記載内容に加えて、軽減税率の対象品目であることと税率ごとに区分して合計した税込金額を記載した請求書)に登録番号、適用税率、消費税額などの記載が追加された書類やデータのことです。
インボイス制度を理解するために知っておきたい消費税の仕組み
インボイス制度を理解するには、前提として消費税について知っておく必要があるため、基本をおさらいしておきましょう。
消費税とは
消費税とは商品の販売やサービスの提供など、取引に対して広く公平に課される税金です。
商品やサービスの消費者が負担し事業者が納付する仕組みですが、事業者には課税事業者と免税事業者があり、違いは次の通りです。
事業者の種類 | 概要 |
課税事業者 | ・課税期間(法人は事業年度)の基準期間(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える事業者のことで消費税の申告と納税をする義務がある |
免税事業者 | ・課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者のことで消費税の申告と納税をする義務がない ・免税事業者も課税事業者になれる |
法人が納付する税金についても詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
税金を法人が納付する方法とは?納付期限から納税方法のおすすめまで詳しく解説 – KAKERU Co., Ltd (kaxeru-office.com)
税率
消費税の税率は標準税率が10%、軽減税率が8%です。
法人税などと異なり、スモールビジネスでも大企業でも税率が変わらないのが特徴的だと言えるでしょう。
軽減税率は次の商品を譲渡した時に適用されます。
軽減税率の対象品目 | 概要 |
飲食料品 | ・酒類以外の食品表示法に規定する食品 ・一定の要件を満たす一体資産 |
新聞 | ・一定の題号(著作物の題名)があり、政治、経済、社会、文化などに関する一般的で社会的な事実を掲載している ・週2回以上発行している・定期購読契約をしている |
食品表示法の第2条で、食品とは全ての飲食物と食品衛生法で定められた添加物で、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律で定められた医薬品、医薬部外品、再生医療等製品は含まないと記載されています。
また一体資産とは、セット商品のように食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっている資産で、セット価格のみが提示されているもののことです。
一体資産の税抜価格が1万円以下で食品価格の占める割合が2/3以上の場合、軽減税率の対象となり、それ以外は標準税率の対象となります。
消費税額の計算方法
消費税を計算するための公式は次の通りです。
消費税額=課税売上にかかる消費税額(売上税額)ー課税仕入などにかかる消費税額(仕入税額)
この公式は、売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を引くことで消費税の二重課税を解消できるという意味を持ち、仕入税額控除と言います。
消費税額は標準税率、軽減税率にわけて計算する必要があるので注意しましょう。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは何かを7つのポイントを踏まえてご紹介します。
インボイス制度の概要
2023年10月から、前の項目でご紹介した仕入税額控除を受けるための要件が次の2つになります。
- 一定の事項が記載された帳簿を保存する
- 適格請求書(インボイス)を保存する
この要件(保存法式)を適格請求書等保存法式=インボイス制度と呼んでいるのです。
適格請求書を発行できるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。
インボイスの記載事項と留意点
インボイスに記載しなければならない事項は次の通りです。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象である場合その旨を記載)
- 適用税率と税率ごとの価格の合計(税抜か税込)
- 税率ごとの消費税額
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
様式は法令で定められていないため必要な事項が記載されていれば大丈夫で、手書きでも適格請求書となります。
商品やサービスを売る側の留意点
商品やサービスを売る側である適格請求書発行事業者には次のような義務があります。
項目 | 概要 |
適格請求書の交付 | ・取引先から依頼があれば適格請求書を交付する |
適格返還請求書の交付 | ・返品や値引きをした時に適格返還請求書を交付する |
修正した適格請求書の交付 | ・交付した適格請求書に誤りがあった場合修正して交付する |
写しの保存 | ・交付した適格請求書の写しを保存する |
適格請求書の写しは、交付した日が含まれる課税期間の末日の翌日から2ヵ月後の日から7年間保存する必要があるため注意しましょう。
商品やサービスを買う側の留意点
商品やサービスを買う側は仕入税額控除を受けるために、次の2つのことに注意しましょう。
- 仕入税額控除の要件である一定の事項が記載された帳簿の保存と適格請求書の保存を行う
- 適格請求書発行事業者以外の免税事業者や消費者などから行った課税仕入れは仕入税額控除を受けられないことに注意する
インボイス制度開始後6年間は、要件を満たせば仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過期間が設けられています。
税額計算の方法
2023年10月から、売上税額と仕入税額の計算方法は「積上げ計算」「割戻し計算」のいずれかを選べます。
積上げ計算とは適格請求書に記載のある消費税額などを積み上げて計算する方法で、割戻し計算とは適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する方法です。
適格請求書発行事業者の登録申請手続
適格請求書発行事業者になるには課税事業者となった上で、適格請求書発行事業者の登録をする必要があります。
税務署が審査をした上で登録された場合は登録番号などの通知、公表が行われるのを覚えておきましょう。
免税事業者の登録申請手続
2023年10月1日から2029年9月30日までの日が属する課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者になるのを可能とする経過措置が取られる予定となっています。
この場合は消費税課税事業者選択届出書の提出は必要ありません。
インボイス制度で知っておきたい7つのポイントをご紹介しましたが、詳細を知りたい方は国税庁のホームページにあるパンフレットやリーフレットなどの資料にも目を通すのがおすすめです。
スモールビジネスにおけるインボイス制度対応の現状
スモールビジネスにおけるインボイス制度対応の現状はどのようなものなのでしょうか。
2022年11月に大同生命が発表したレポートで、中小企業のインボイス制度への対応状況をたずねた所、次のような結果でした。
回答 | 割合 |
既に登録が完了している | 46% |
2023年3月末までに登録完了予定 | 29% |
2023年3月末までの登録は困難 | 2% |
未定 | 23% |
まだ未登録の企業が54%もあり、対応をどうするかも含めて様子を見たいという意向が垣間見えます。
一方、インボイス制度対応への課題を聞いてみると次のような結果でした。
登録済み | 未登録 | |
請求書など様式変更対応に要するコスト負担 | 39% | 30% |
経理業務のフロー変更 | 32% | 24% |
経営者自身や経理担当者の理解が不十分 | 21% | 33% |
行政からの周知が不十分 | 23% | 24% |
業務多忙のため対応時間が取れない | 11% | 21% |
登録の有無に関わらず、複雑なインボイス制度を理解するのが難しいのが課題と感じている様子がうかがえます。
スモールビジネスにおけるインボイス制度への対応方法
スモールビジネスにおいてもインボイス制度について理解を深め、対応をする必要があります。
国税庁のホームページに掲載されている「適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-」というパンフレットの22ページには、「事前準備の基本項目チェックシート」がついています。
このシートを使うと適格請求書発行事業者の登録をするかどうかの判断や、登録をする場合の事前準備などをスムーズに行うことができます。
またインボイス制度の最新情報は国税庁の「インボイス制度公表サイト」で知ることができるため、こちらもチェックするとよいでしょう。
株式会社KAKERUではスモールビジネスに携わる皆さまがインボイス制度に則り正しく納税するのを応援しています
株式会社KAKERUではスモールビジネスに携わる皆さまがインボイス制度を理解し、正しく納税するのをサポートしています。(書類の作成代行や個別の税務相談等は弊社ではお請けいたしかねますので、提携先の税理士をご紹介します)
消費者が支払った消費税を事業者として適切に納付するのは、スモールビジネスの健全な運営において重要なことだと考えているためです。
インボイス制度への疑問が解決せずお困りの際は、ぜひ株式会社KAKERUにご相談ください。
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まとめ
インボイス制度とは仕入税額控除を受けるために適格請求書を保存する法式のことで、スモールビジネスを運営する人にとっては消費税を適切に納付するために知っておきたい制度だと言えるでしょう。
この記事を入口にして、ぜひインボイス制度への理解をより深めてみてください。